試合は引き分けのまま推移していた。
もう時間がない。ラストプレーかと思われたその瞬間、DFからのロングパス。
誰が出したのかは分からなかった。
そのボールは2人の頭を越え、4人を越え、6人を越えていく。長いボールだ。
その先に赤黒のユニフォームが猛然と走り込んでいる。
内村だーーーー!!!!
僕の目の前で、半身になった内村が足を振り抜いた。その瞬間の内村がスローモーションに映る。
次の瞬間、ボールはゴールに吸い込まれていた。
ヴァァアアアア!!!!!!!!
至る所から叫び声が上がる。
スタジアムが揺れる。
まわりにいる全員が拳を振り上げている。
日常生活の中で、こんなガッツポーズすることなんてあるだろうか。
普段、温厚で通っている僕も、なんだかよく分からないことを叫んでいたと思う。
鉄仮面と呼ばれるほど感情に起伏のない僕の涙腺が、崩壊寸前まで来ていた。
後半アディショナルタイムに逆転弾?
この勝利で2位を突き放し、最終節へ?
は?そんなコッテコテの脚本、通るかそんなもん!
ロングパスの出し主は河合だった。
長年札幌を支えてきた二人のアシストとゴールなんて、そんな脚本認めるわけには……。
試合はボールを支配できず千葉ペースだった。
先制される苦しい展開。
何度もポストに助けられるが劣勢が続く。
足が動かないのに動け動けと自分の足を叩き続けるとっくん。
顔面から相手に突っ込む石井ちゃん。
シミュレーションを取られて、なかなか立ち上がれないジュリーニョ。
試合終了後に泣きじゃくる進藤。
サポーターの前で挨拶する時の、河合の軽いガッツポーズが最高にカッコよかった。
そしてサポーターの応援の迫力が凄まじかった。声がスタジアムに響く度に鳥肌が立った。
12,000人の入場者数に対して、札幌側サポーターは3,000人ほどとのことだったが、応援の迫力は負けていなかったと思う。絶対にここはアウェイじゃなかった。強力に選手を後押ししたはずだ。
いよいよ最終節。全てが決まる。
舞台は整った。もう一度絶叫させてくれ!!
We! are! SAPPORO!! We are SAPPORO!!
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